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飛行機の世界から学ぶ経営いろは考:第25講;『Carburetor Icing(気化器凍結)』
第25講;『Carburetor Icing(気化器凍結)』
今日もまたまた、エンジンに関わるキャブレター(Carburetor)のお話です。
なんでこんなメカニックなことを書くかって・・・?
飛行機も企業・組織も、安易なことをやったり、チョコマカした理屈を知っているだけで操縦、運営をしようとすると危険だからなのです。
私は飛行機の免許を取得するのに航空身体検査で大臣判定となり、実技飛行訓練ができないということで、最初に飛行訓練を開始したのが中国広州陽江市合山にある民間飛行訓練所でした。
ここでの訓練は、基本的に飛行訓練時間のログを作る(稼ぐ)ことでした。
中国広州陽江市合山に着いて15日間、市内の5つ星ホテル(日本ではビジネスホテル並で、部屋が広いだけ・・・)に宿泊しながら、毎日、3時間からロングナビの時には合計で5時間は飛んでいました。
ここでの訓練用飛行機はなかなかいいものを使っていました。セスナ172Rという、キャブレター・コントロールがない自動キャブレター・ヒーティング・システムでした。
ですから中国での飛行訓練を終えて、日本のクソッタレ教官に教わるようになったら、
「ここはキャブ・ヒートだろう! 中国でなに習ってたんだぁ~!」
「ええっ!? 中国の飛行機には、キャブレター・コントロール・レバーがなかったんです(^^;」
「初心者に、あんな高級飛行機で練習させると命がなんぼあっても足んねぇんだぁ!」
「・・・・」
これは正しい言いぐさでした。
その時には、クソッって思いましたが、米国領GUAMでFAA免許取得のため訓練を開始しし始めて、数ヶ月に1回渡航したのですが、ある日、行ってみますと乗り慣れた飛行機の残骸が訓練学校ハンガーの片隅に置かれていました。
教官に原因を聞きましたら、米国本土で教官をしていた日本人が、この訓練校で教官をしたいと入社したそうです。彼の乗り慣れていたのが、やはりセスナ172Rであったのです。
この訓練校は、GUAMに遊びに来た観光客相手に遊覧飛行もします。(実はこっちの方が断然儲かるのです!)
その本土での教官経験者に観光フライトを命じたそうです。
飛び立って30分ほどの遊覧飛行を終えGUAM国際飛行場に戻って着たとき、セスナ172P型の飛行機ではエンジンのパワーダウンを開始する前に、本来ならキャブレター・ヒートをオンにしなければなりません。
しかし、彼の乗り慣れた飛行機には、キャブレター・コントロール・レバーがなく・・・そのまま着陸態勢に入った途端・・・エンジンがポスンと止まってしまい緊急着陸を試みたのです。
もちろん「Mayday Call」ですから・・・GUAM国際空港は、すべての飛行機の離発着停止宣言(^^;
軟着陸ができず、前部を大破するも・・・乗員・乗客が無事だったのが不幸中の幸い!
とはいうものの、そこから当飛行学校の飛行機の数が1機減ったために、訓練にも観光遊覧飛行にも支障が生じましたね!
このとき、日本のクソッタレ教官の言ったことが頭に浮かんだのは事実です!
さすがにクソッタレな教え方をするのですが、道理をよく知っていらっしゃる。
後で、幾人かのベテラン・パイロットや本で得たアクシデントの多くに、「キャブレター・アイシング(Carburetor Icing)」が原因になっていることを知りました。
そこで・・・、今日は、またチト長いのですが・・・、ご辛抱下さい!
もちろん最後の方にあるビジネス・リーダーの教訓へトラップしていただいてもOKです(^o^)/
「キャブレター(Carburetor)」というのは、エンジンに燃料と空気の混合気を作り送る装置です。
「キャブレター(Carburetor)」で発生する問題は、内部に氷が張り付いてエンジンの出力が低下したり止まったりすることなのです。
この様な状態を「キャブレター・アイシング(Carburetor IcingまたはCarburetor Ice)」 と言います。
「キャブレター(Carburetor)」の中では、燃料のガソリンが蒸発して液体から気体へと変化します。
ほとんどの液体では、その蒸発が起こる時にご承知の様に気化熱を奪うのです。
子どもの頃、お風呂あがりに、お母さんやお父さんに「早く体拭かないと風邪引くよ!」って言われたでしょう!?
実は、カラダが濡れたたままでいますとどんどん体が冷えていきます。
その原因が気化熱ですね!? 気化熱とはいうには、液体の物質が気体になるときに周囲から吸収する熱のことなのです。液体が蒸発するためには熱が必要になります。その熱は液体が接しているモノから奪ってゆき蒸発してゆきます。
ですから体が濡れていますと、表面の水滴が体温を奪って蒸発しようとし寒くなるのです!
注射する前にアルコール綿で皮膚を消毒のためにふきますね!?
冷やっと涼しく感じるのはアルコールが蒸発し、その時に皮膚の熱を奪うからです。
水でも冷たく感じるのは同じ原理です。
ガソリンやアルコールは揮発性か高い(蒸発しやすい)ので、他の液体よりも気温が下がります。
「キャブレター(Carburetor)」内部は、燃料であるガソリンが気化して空気と混ざる所です!
「キャブレター(Carburetor)」の内部でも、大量の熱エネルギーが回りから吸収されます。熱エネルギーが無くなると、回りの温度が急激に減少するわけです!
これが理由で、キャブレター内部では気温がかなり低下します。
空気が湿っていると、大気中の水蒸気がキャブレター内部に付着し、キャブレターが0度以下にもなることがあるので氷が漂着しやすくなります。
「キャブレター(Carburetor)」に氷が出来やすい温度は21℃(華氏70度)とされています。
湿度は80%以上になりますと最も出来やすい状態です。
場合によっては湿度が50%でも出来やすくなるそうです。
ですから南国の湿度が高いところでの飛行では、「キャブレター・アイシング(Carburetor Icing)」が起こる条件が多く存在します。
「キャブレター・アイシング(Carburetor Icing)」を防止する為に、「Carburetor Heat」と言うモノを使います。
「キャブレター(Carburetor)」に熱い空気を送り込む事で、「キャブレター・アイシング(Carburetor Icing)」を防ぎます。
「Anti-Icing(氷を出来るのを防ぐ事)」も含めて、「キャブレター・アイシング(Carburetor Icing)」になってしまった時にも、氷を溶かす(De-Icing: 出来たIceを取り除くこと)ができます。
しかし氷を溶かし(De-Icing)ますと、その氷が溶けてエンジンに大量の水が流れ込むこととなり、またそう簡単に氷を溶かす(De-Icing)ことができる保証もないので、常日頃から、「キャブレター・アイシング(Carburetor Icing)」を防止する為に、「Carburetor Heat」を使うものだと心得て置かねばなりません!
「Carburetor Heat」の熱源は、熱くなった排気ガスが通過する管の回りに空気を通過させ、暖めた空気を「キャブレター(Carburetor)」に送ります。
この部分のことを「Shroud」と言います。
その中には、管が通っておりエンジンから排気される熱風が通過し、その排気ガスの熱で内部の管が高温に温められます。そして、その回りをもっと大きな管が捲いてあります。
暖めたい空気を通過させますと熱い空気ができるわけです!
その熱っせられた空気をキャブレターに持って行きたいときに、コクピットの真ん中ほどにある「Charburetaor Heat」のノブを手前に引きます。
「Shroud」で暖められた空気は、室内のヒーターや曇り止めにも利用します。
以前にも書きましたが、セスナ172くらいの飛行機はエアコンがありません!
冬は、「Shroud」の空気を利用して暖房します。夏は、上空に登ってから外の空気を入れればクーラーになります。
ですが・・・、訓練生が常周経路(Traffic Pattern)を飛ぶくらいの高さですと暑くてクタクタになります(^^;
余談ですが、熱源である排気ガスはもちろん有毒ガスです。一酸化炭素などを含んでいます。万が一、排気ガスの臭いに気がついたなら、ヒーターなどは即時に使用中止し、窓を開けてなければなりません!
そして、直ちに着陸すべきですね!
「Carburetor Heat」からの熱風は「Air Filter」を通していません。
ですから、日本の訓練場でした茨城県大利根飛行場はホコリまみれの飛行場なので、クソッタレ教官からは、ファイナルに入ったら「Carburetor Heat」をオフにしろって怒鳴られました。でも、その理由を教えてくれないのです。
「チェックリストには、タッチダウン(滑走路に車輪が着いたら)したら、「Carburetor Heat」をオフにせよと書いてあるのですが・・・?」
って質問しますと、
「Pilot's Operating Handbooku CESSNA SKYHAWK 172(セスナ172取扱法)」をよく読め!」
って、バカにした言い方で教えてくれませんでした。
米国の教官から、手取足取り教わって、なるほどそれはFilter(フィルター)の目詰まりを起した時に予備の空気の入り口として使かわれるもので、やはり地上ではエンジンに良い影響、特に空気の汚れた飛行場では良くないことを知りました。
かなり長くなってしまいましたが、もうここまで来たら「山本リンダ」です!
熱せられた空気は「Icing」を予防する効果があります。
しかし熱い空気は、ご想像のように膨張していますので、空気密度が低いため、エンジンの出力が下がってしまうのです!
そのため離陸時など、エンジンを高出力で使おうとする時には、「Carburetor Heat」は使ってはならないのです!
ここでも、先だっての調布飛行場付近墜落炎上事故の飛行が、なぜイマイチ馬力がでなかったのか?という疑問の答えの一つに、「もしや・・・Carburetor Heatがホットだったのでは?」と私は考えの一つにしました。
冬の長時間飛行の場合、たまに「Carburetor Heat」を(ホット)オンにして、「Icing」が起きていないかを確認することがあります。
私には、その経験はないのですが、実技口述試験で試験官から時たま質問されることがあるそうなのです!
「もしIcingが起こっていたら、どうなりますか?」
普通なら、「Carburetor Heat」をホットにしますと、RPM(回転数)が落ちるのです。
その後にRPM(回転数)に増えるようだと、Icingが起こっていた可能性があるのだそうです。
このような時は、完全にIceが溶けるまで「Carburetor Heat」をオンにしておきます。
中途半端にOFF(コールド)にしますと、残っていた水が再度硬い氷に変わってしまい、溶けにくいIceに変わる可能性があるそうです。
さてさて長くなりましたが、ビジネス・リーダーへの教訓は、「Carburetor Icing」という現象が、比喩的に組織にも起こり得るのだということを知っていただきたいのです。
企業・組織は、イケイケ・ドンドンで急成長する時期があります。
その時期というのは、非常に危険な時期なのですが、残念ながら「有頂天」になっていたり、「猫の手も借りたい」状況のために、人の採用がおざなりとなります!
最も危険なのは、「企業・組織の思想、経営理念、方針」に添わない「人罪」を採用してしまうことです。
最悪は、競争・競合企業からスパイ擬きの人間が入社してきます。
人間は、また、調子の良いときには「不平・不満・愚痴」は言いません!
ところがひとたび有頂天から下り坂に入ったら、これが吹き出すのです!
そんなときに「不良分子」として居座っていた「人罪」がニョキニョキと組織を冷やし始めます。もしくは煽動を始めます。
何も採用での不手際だけで、このようなことが起こるのではありません!
入社早々に、企業・組織の理念、思想、社風を徹底的にたたき込まないかな起こることも多々あります。
なぜか!?
当たり前です!
人間は、みんな生まれも、育ちも違い、異なった価値観を持った人が組織の一員になります。ですから、いままで培ってきた組織の社風に当初馴染めない人もいるのです。
企業・組織の理念・思想が正しければ、徹底的にそれを熟知してもらい、自分の価値観にしてもらったとき、はじめて本当の組織員の一人となるのです。
「Carburetor Icing」というのは、混合燃料(混合気)を作るために、燃料を噴射させるときに気化熱が奪われ、氷ができる現象です。
企業・組織も経営資源(経営リソース、ケーパビリティ)を適切に経営エネルギーに効率よく変換することがビジネス・リーダーに求められるのです。
ところが、そのエネルギー変換の時に、思わぬ組織脆弱によって、組織のどこかに氷が不着する・・・それがいずれ多くの問題を引き起こすのです!
「Carburetor Icing」を防ぐために、最後の方で書きましたが、時々、「「Carburetor Hot」にして、氷を溶かさねばならないのです!
この方法の一つが、徹底したビジネス・リーダーと従業員のコミュニケーションなのです。
不振企業に出向いて経営診断や経営指導をしますが、すべてに共通するのが「冷たい雰囲気」です。まさに「Carburetor Icing」のような現象が起こっています。
ですから私の真っ先にすることは、「みんなと打ち解け、コミュニケーション」の取れる状況を作ります。
「定性的診断」をやっても悪いところだらけです(^^;
指導をしようとしても、「斜めに構えて」講義を聴いたり、下向いたままのが多いですね(^^;
ビジネス・リーダーのみなさん、御社の各部署別組織の「Carburetor Icing」を見つけて、「Carburetor Hot」をやって下さい!
ありがとうございました。
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